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でも誰かはわかっていた.
見覚えのある形,
嗅ぎなれたこの臭い.
石田のコ-ト.
それ以外考えられない.
石田を探し見ると
近くのスタッフに
上着を借りていた.
石田は凍えている俺に
気づいてくれた.
そして気遣ってくれた.
俺の馬鹿なプライドを
傷つけないように.
石田と目が合った.
「もうすぐM-1やねんから.体ぐらい気つけてや」
石田も素直じゃないのが
丸わかりだった.
思わず笑けて目を背ける.
素直じゃない石田が
可笑しくて
石田の被せてくれたコ-トが
暖かくて
石田の不器用な優しさが
暖かくて.
今日ぐらいは素直に
優しくされようと
俺は暖かいコ-トを
ずっと被っていた.
END
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