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「風邪じゃないの?病院にいったら?」
と、同僚の沙希に言われた私は
「やっぱ、いったほうがいいかな?ひどくなったらみんなにうつしちゃうもんね。」
昨日まではなんともなかったのに。仕方ない、明日いくか。
私、石崎 凛香。今年で21歳になる。某アパレルメーカーに勤める平凡な会社員だ。
同僚の沙希、豊田抄希子はこの会社で知り合った数少ない友人だ。
「夏風邪は長引くから、きをつけなね。今日は飲みはなしね。早く帰って寝な。」
抄希は私の肩を両手で掴んで回れ右をさせた。
「え~。でも熱ないし、大丈夫だよ。一杯だけだから。ねっお願い!これだけが楽しみなんだから。」
私は振り返って両手を合わせ、懇願した。
「はい、だめだめ。治ったらいくらでも付き合うから、今日はまっすぐ帰りなさい。」
と頭をなでられてしまった。
私は仕方なく、
「じゃあ、治ったら必ずね。あとでメールする。そんじゃね。」
と手を2、3度振った。
「はい、はーい。あとでね。」
抄希も笑顔で手を振って駅に向かって歩いていった。
抄希を見送った私は、いつものように自転車置き場に向かった。
「ただいま。」
私はいつものように誰もいない部屋に声をかけた。
「今日は早く寝よ。」
いつもならグダグタ起きている私だが、今日は具合が悪いせいか、だるい気がする。
「こういうときは寝るのが一番っと。」
半ば飛び込むようにしてベッドに潜り込んだ。
………ほら、……今日は空が笑ってるよ……
私は突然の声に目がさめた。
「なに?今の?夢?…きっと疲れてるんだ。早く寝て、明日すぐ病院に行こう。」
私はたいして気にもとめず、また寝ることにした。
それがすべての始まりだとはこのときの私は無論きづくはずがなかった。
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