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ジューンブライド
霧雨滴る
崩れ落ちた誓いの家で
貴方はそっと紫陽花の束を削ぐ
あの頃の幸せな花嫁は
今どこで何をしているのでしょう
世界が終わるその時も
あの人と
温かく温かく
暮らしているのでしょうか
荒れ果てた幸福の家で
着飾ることも叶わない私に
貴方はそっと紫の花を
犯した過ちは罰となり
許されはしないでしょう
焼けた醜い左の頬
残る片腕で愛でた貴方は
キスと
温もりと
永遠の言葉を
それでも、
「綺麗だ」と言ってくれる大切な人がいて
私は
誰よりも、誰よりも幸せなのです。
胸に零れた花弁が祝福して
私はやっと瞳を閉じる
どうか
最期にひとつだけ
私の言葉を持っていってください
「……………」
着飾るものなど無くても
犯した過ちが許されなくても
醜く傷ついていたとしても
私は
誰よりも、
誰よりも、
幸せでした。
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