和泉寛治

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今日も僕は放課後の校内をダ~シュ 別に部活じゃ無いよ… 僕のエネルギーは有り余っている。だから、放課後になると僕は誰もいない校内を走る。 変な奴なんて思われたくないから部活が始まり、大抵の生徒が電車に揺られている頃に俺は走る。 階段を勢いよく駆け下りて、最後に五段飛ばしでジャンプ。 両足が同時に地面に着く時の音が気持ち良い。 再び走り始めようとしたが、止めた。何故かって?二階にある図書館の扉が開き、誰かが出てきたからだ。 彼女には見覚えがあった。 彼女はクラスメイトの御子柴綾乃(みこしばあやの) 僕はクラスの半分くらいの女子とは話した事はあるが彼女とは話した事がまだない。 彼女はこっちに気が付くと、僕に向かってゆっくりと会釈をした。 僕もそれに合わせて会釈し返す。 彼女は綾乃って名前に恥じない程の落ち着いた雰囲気の女子…と言うより、もう女性と言っても良いんじゃないかな? お嬢様だと言う噂もある。真偽の程は分からないけど、確かにその意見には僕も賛成だ。 彼女は長いウェーブのかかった髪を揺らしながら、僕の横を通り過ぎた。 オレンジみたいな柑橘系の匂いが漂う。 その瞬間、僕は気付いたね。彼女に恋してるって…さっと振り向くと、彼女は悠然と階段を下っていた。 いくら僕でも彼女に話し掛ける事は出来なかった。 彼女に話し掛ける勇気ある男子は居なかった。それどころか女子だって彼女に話し掛ける事が出来るのは柏木静香(かしわぎしずか)だけだ。 御子柴さんが窓際で読書をしているのは非常に絵になる。 その一枚の絵画を乱す事など、ほとんどの一般生徒には難攻不落の要塞に責め入るくらい難しい事だった。 才色兼備。正に彼女を表すにぴったりな言葉。成績も常に学年三位以内。一度だけ見た事があるが、その時はバレーボールだったが体育の時間も彼女は活躍していた。 レシーブ…バシッ!! スパイク…ドンッ!! って感じ…まるで何かが乗り移っているかの様だった。家でスポーツトレーナーにでも習っているのだろうか? それに付け加えて、彼女は可愛い顔をしている。芸能人みたいな小さな顔に、毎晩どこかの工場で研磨してるんじゃないかっていう鼻・宝石みたいな目・あまり厚くない控え目な口。良い意味で完全に学校で浮いていた。 誰も近寄る事の出来ない。美術館の国宝。 それが彼女。 って言い過ぎかな?
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