御子柴綾乃

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本は上中下巻になっていて、タイトルは「雨の中の二人」長編の恋愛小説みたい。 恋愛小説かぁ~あんま好きじゃないんだよなぁ~。 まあ、いいかな? 何か知らないけど、みんなからはお嬢様キャラって思われてるみたいだし。 ちょうどいいか~ 別にお嬢様じゃないんだけどねでも、あんま悪い気はしないし…一年ちょっと染み付いたイメージを変えるのもちょっとね…私のファンが泣く(…なんて冗談だけど) 静香ちゃんと真由ちゃんの前では普段通りの私でいられるかな? 彼女達がいなかったら、私のここでの学校生活はかなり変わっていたと思う。 真由ちゃんは一年生の時に仲の良かった同じクラスの女子。でも、今はお互いに仲の良い友達──つまり私の場合は静香ちゃん──が出来たから最近は廊下ですれ違った時に声を掛け合ったり、たまにメールするくらい。 だから今は休み時間のほとんどは静香ちゃんと一緒に過ごしている。 静香ちゃんは誰にでも話し掛けに行ける人。そこは真由ちゃんにも凄く似ている。そこは私には全く無い面だから羨ましいな… その時、何かの放送が流れた。でもはっきり聞こえなくて、何を言っているか分からなかった。確か前に青山さんからここの図書館では集中して本が読めるように少し防音構造になっていて、放送がよく聞こえないと言っていた。 「じゃあ、これにします」 司書の青山さんの選ぶ本に外れなし。 私はこの本に決めました。 本の貸し出しの手続きを終えて、青山さんに背を向けた瞬間に私の胸は少し高鳴る。でも、校門に辿り着くまでは一応、お嬢様でいなきゃね。 家に着くまでが遠足です。 門に着くまでがお嬢様です。 扉をゆっくりと開けた。 廊下に出ると見知った顔が… 確か…イズミ君?同じクラスになって一ヶ月だから、名前は知らない。私の彼に対する認識は賑やかな男子。 私は彼に向かって軽く頭を下げた。 彼は慌てた様子で頭を下げた。 ちょっと可愛いかも… とりあえず私は優雅な感じで…感じ…カンジ…そうだカンジって名前だった。イズミカンジ君。 やり直し…とりあえず私は優雅な感じで彼の横をすり抜けた。階段をゆっくり降りて、辺りに誰もいなくなったのを見計らって私は駆け出した。
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