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“それ”
の力が絵梨に備わったのはいつからだろう。
たぶん,ずっとずっと昔
むしろ
産まれる前からかも知れない。
産まれた時
既に絵梨は要らない子だった。
絵梨がお腹に宿ったころ,
母と父はまだ結婚というものをしていなかった。
母は,
女の勘とか言うやつで,
絵梨を妊娠したと感付いたら
産婦人科へと行った。
医者「妊娠3週間といったところですかね。おめでとうございます。」
絵梨ができたと知った時の母は
まだ
絵梨の誕生を喜んでくれていた。
母「早く産まれてきてね♪私の赤ちゃん♪」
母は
父にはそれを話さなかった。
と,
言うより,
話せなかったのだ。
父は海外を転々とする仕事に就いていて,
帰ってくるのも,
1・2ヶ月に一度か
それくらいだ。
でも,
妊娠して2ヶ月くらいの時に
一度父は帰ってきていた。
父「なんかお腹出てるな...太った?」
母「ごめんね...」
父「ん?大丈夫だよ。ダイエットしとけよ!」
母は何も言い出せず,
謝っただけだった。
男とは鈍いもので,
“妊娠”
というものをまったく考えてなかったようだ。
そうして父は次の仕事に就く為に,
日本を後にしたのだった。
父「次の仕事は長引きそうなんだ。ごめんな。」
あの時言っていれば...
母はどんなに悔いただろうか。
もう...
戻れない。
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