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序章 二人の出会い
眼前に広がるのは、緑と黄緑と濃い茶が織り成す幻想的な世界。木々の隙間から辛うじてこぼれ落ちてくる光のレース以外、明かりはないに等しい。夜は一層闇を感じるだろう。それに、森に住む魔物は平地と比べると格段に強くなっているのも事実だ。そんなことが手伝ってか、深い森を一人で歩くのは危険だとよく言う。
だが、サンはまったく気にしていなかった。
「おーい、腹減ってるんだろう? やるから降りて来いって」
腰に下げた麻袋のふたを開け、中からパンとチーズを取り出すと、それを掲げるようにして、サンは目の前に立つ大樹の天辺に向かい、叫んだ。
「キュ~キュキュ~」
どうやら呼びかけられた相手は戸惑っているようだ。サンは肩をすくめ、「まっ、無理もないか」と呟いた。背中に背負った大剣、紺色のマント、加えて自分のつり上がった眦を見れば、怖がりもするだろう。
「ほら、降りて来いって。経験値狙いじゃないんだからさ」
説得するように言って、パンとチーズを左腕に抱え、右手で剣の柄を握ると、そのまま自分の相棒でもある武器を、苔に覆われた大地の上に静かに置いた。
「ほら、な。オレはおまえたちの敵じゃないんだって」
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