序章 二人の出会い

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「ほら、パンとチーズ。レジタナ村で知り合いのばあちゃんが作ってくれたんだ。すっごく美味いから、食べてみろって」 「キュキュキュ~!」 フードから出てきて自分の右肩にちょこんと座りこんだホワイトスノーを笑顔で振り返り、サンがパンとチーズを小さくちぎって与えようとした時だった。切羽詰まった鳴き声が、また大樹の天辺から降ってきたのだ。 その声音は、完全な拒絶を宿していた。その子に近づくな、この森から出て行け、と。サンには、そうはっきりと聞こえた。 肩に座っているホワイトスノーがまだ子供で、好奇心にあふれているから人懐っこいだけであって、本来ならば姿を見せることはあっても寄ってくることはないないのだ。小さく、可愛いとは言っても彼らはれっきとした魔物なのだから。 「キュ~」 肩の上でしょんぼりとうなだれる小さな魔物に、サンは「気にするなよ」と優しく声をかけてやった。 「うーん、パンとチーズおまえ運べる? って言っても重いし、大きいし無理があるよな……」 パンとチーズ、ホワイトスノー、それから大樹の天辺を順番に見ながら、サンはどうするべきか悩んで首を傾げた。
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