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しばらく悩んでいると、頬をくすぐられた気がした。
「キュキュ~!」
くすぐって(おそらく本人的には叩いたのだろうが)きたのは他でもない、ホワイトスノーだった。振り向くと、すっくと立ち上がり、「任せて!」と言わんばかりに小さな手で胸を叩いてみせた。雪色の魔物の余りの可愛らしさにサンは思わず表情を綻ばせると、笑ってしまった。
「キュ~キュキュ~」
自信満々に鳴きながらサンの腕の中にあるパンとチーズを受け取ろうと、小さな両手を差し出すホワイトスノー。その健気な姿に目を細めていたサンは、やがて決心したように軽く右手を握りしめると、うなずき、空を仰いだ。
「聞いてくれ。さっきも言ったけど、オレは敵じゃないんだ。それに、おまえたちが腹減ってるのは本当のことだろう? ここに来た時、森が教えてくれたんだ。だから、オレは──」
「キュキュキュ~!!」
「キュキュ~!!」
サンの必死の呼びかけにも不快感をあらわにしながら、ホワイトスノーは言葉を遮るように、今度は一斉に声を上げた。そこにある確かな恐れと憎しみ。それが自分に向けられていることに対して、人と魔物はそう易々とは相容れないのだと言うことを改めて痛感した。
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