序章 二人の出会い

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(でも、それでも……) 森は言っていた。 人間によって傷付けられたホワイトスノーがいる、と。そのホワイトスノーは自分の懐に住んでいる群れのリーダーである、と。 普段から仲間を導き、守る立場にあるリーダーが身動きも取れない状態に追い込まれたとしたら、場合によっては一族の存亡の危機につながる可能性だって出てくるのだ。 そして、ホワイトスノーは、まさにそれだ。彼らは群れのリーダーが瀕死の重傷を負い、動くことさえままならない状態に陥った時、その場を決して離れようとはせず、飲まず食わずを貫くのだ。そう、リーダーが死ぬその時まで。 それが理解できない訳ではない。人間社会で言う掟みたいなものなのだから。ずっと昔に作られた決まり事を今更変えることは出来ない。 「でも、やっぱり、そんなの間違ってる。助かるかもしれない命を、ただ黙って見ていることしか出来ないなんて……」 苦しそうにそう言って、サンは、黒い布で幾重にも巻かれ、わずかに指先しか覗いていない自分の右手を見つめた。眉根を寄せ、先程と同じように視界の先に映るものをゆっくりと握りしめる。やがて、目を背けたいのをこらえるように頭をひとふりすると、再び勢いよく顔を上げた。
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