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毅は、洸を「兄ちゃん」と呼ぼうとしたが、さっき洸に言われた事を思い出し、名前で呼んだのだが…。
「何でさん付けやねん」
どうやら、洸は気に入らなかったらしい…。
「…。まぁ、ええわ…。それより、毅。そんなにあの人の事知りたいん?」
「そ…っ‼」
「そ……?」
「……っ」
毅は、洸に何か言おうと口を開けたが、すぐに閉ざしてしまった。
「何やねん。気になるやんか…」
洸は、毅の耳元で囁きながら言った。
「今日の朝──…。洸さんが言うた事、ほんまなん…?」
「え…?」
今朝、洸が毅には聞こえないだろうと、小声で呟いた言葉───…。
それは、毅にはしっかりと聞こえていたらしい…。
「今日の朝、好きやで‥って…。あれは、本当?」
毅は、寂しそうな、切なそうな顔で聞いた…。
「…ほんまや。ほんまは、もっと早く打ち明けたかった…。でも、お前に嫌われるのだけは嫌やった…。…でも、あんな事しといて、嫌われなかったらおかしいって思って…。あれは、俺のほんまの気持ちや…」
洸は、今までにない優しい声で言った。
毅に信じてもらえなくても、拒絶されても引かれても良い…。
ただ、自分の本当の気持ちを言いたかった──…。
「ほんまのほんま…?俺、兄ちゃんの事、信じてもええの…?…‥っく…」
毅は涙声で言っていたが、最後は我慢出来ず、涙を流した。
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