魔法の使えない王子様

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「兄様!」  僕はいつものように、大好きな三番目の兄様の部屋のドアを開ける。背伸びをしなくても、ドアノブに手をかけれるようになった。今日は僕の十二歳の誕生日。兄様にさんざん甘やかされるんだ。 「……兄様?」  だけど、部屋からは兄様の声はおろか、物音すら聞こえない。変だな。寝ていても、僕の声でいつも起きてくれるのに。  僕は部屋の中に足を踏み入れる。しんとした部屋の中。今日は兄様にお仕事はないはずだ。去年もその前だって、僕の誕生日だけは絶対にお仕事を入れないでくれたんだもの。 「どこにいるの?」  だけど、兄様はいないみたい。部屋の中をうろうろ探したけれど、兄様はいなかった。兄様といつも一緒にいるマリーですら、いない。  僕は頬をめいっぱい膨らませ、部屋を出た。
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