魔法の使えない王子様

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「おお、」  僕は目をぱっちり開いた。こんなにたくさんの人間を見たのは初めてだった。  白いおばあさん、真っ黒のおじさん、きゃわきゃわはしゃぐ女の子。色んな色の人がいる。 「お城の中だけがすべてでは無いのですよ」  女は僕の手を握り、歩き出した。遅れまいと、僕も歩き出す。 「なんだ、この賑わいは」  僕は話すのも大変なくらいの騒がしさに驚く。城はいつでも静かで、こんな明るい声にまみれていない。 「今日は四番目の王子様の誕生日ですから、みんなでお祝いしようと盛り上がっているのですよ」 「僕の誕生日だから?」 「そうです」  僕はぐるりとまわりを見渡した。僕の知らない人たちが僕をお祝いしてくれる? なぜ、どうして。僕はこの人たちに何もしていないのに。 「王子というのは、国の宝ですからね」  女は意味のわからないことを呟いた。
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