魔法の使えない王子様

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「ところで王子、あなたは魔法を使いたいとお思いですか?」  女は僕に、ほかほかの丸い食べ物を渡しながら、聞いてきた。 「そんなの当たり前だ」  恐る恐る、丸い食べ物に鼻を近づける。おいしそうないい匂い。僕はかぷっとかぶりついた。 「……おいしい」 「そうですか」  女は満足そうに頷くと、話を続ける。 「魔法がどうやったら使えるようになるか知っていますか?」 「そんなの、兄様の年齢になれば自然と使えるようになるんだろう?」  僕はむしゃむしゃと、おいしい食べ物をほおばった。 「違いますよ」  女は僕に紙コップに入った飲み物をくれながら、さとすように言う。 「異性とキスをすると魔法が使えるのです」  僕はごきゅっと、口いっぱいにほおばった食べ物を飲み込んだ。
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