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無限に続くような錯覚に陥るほどに長い、ワインレッドの絨毯が伸びる回廊。その、荘厳な雰囲気の漂う静謐の道を、一人の男が歩く。
身に纏うのは、黄金と白銀に彩られた、繊細な飾り彫刻の施された鎧。背中にあるのは、魔王討伐の命を受けた際、祖国の王から授かった宝剣。それらの品々が、純潔たる月光を受けて星のように輝いている。
ここに至るまでの道のりは、とても長かったと思う。結局、大陸全土を巡る旅となり、祖国に戻ってきた今日この日まで、各地を転々としていたのだ。
しかし、一つだけ腑に落ちない点がある。
魔王の存在が噂され、恐怖が各地に伝播しているにも関わらず、実被害が一切ないのだ。それでも途中、領域を侵そうとしていた魔族の撃退をするなど、一応の成果はあったのだが。
ふと、男は旅に出る前に王から渡された、小瓶を取り出す。魔王を打ち破る力になるらしい、膨大な魔力を蓄積する小瓶。
そして唐突に、謁見の間が目前にある事に気付いた。ゆっくりと、重厚な観音開きの扉が開く。
「ご苦労様……世界を闇に包む魔力は集まったかなァ?」
彼は視界の奥の玉座に佇む祖国の王こそが魔王だと、今初めて悟ったのだった。
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