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「妊娠したというニュースを俺たちはとても喜んだ。まぁ、最初は性別とかわからなかったし、この後にも詳しい検査をしなければならないけどな。名前を考えるのがはっきりと楽しかった。それで、しばらくして、担当医師から双子だと告げられた。」
「双子・・・」
僕は双子という言葉を反復してみる。それがなぜだか頭に引っかかって離れない。
父さんは酒の勢いか僕の様子には気づかずに話し続ける。
「双子ということでな、二人の名前を考えた。性別がどっちでも合うように。それで、二人で話して決めたのが、葵と宙だ。」
「葵と宙・・・」
『葵・・・』
僕は自分の名前と兄の名前を呟く。
兄さんは初めて聞く自分の名前を呟いている。
そこでずっと黙っていた母さんが、口を開く。
「宙は自分の名前の意味って考えたことある?」
母さんの問いに僕は黙って首を振る。
父さんはさっきより酒の進むペースが速くなっているようにも思える。
母さんはしょうがないといった顔でふぅと一息ついて語り始めた。
「二人の名前、葵と宙。二人の名前をくっつけて呼んでみて。」
母さんに言われるように頭の中で反復する。
兄さんである葵も僕と同じことをしているようだ。
僕が葵と話していると二人であぁっと思い、手をぽんと打つ。
母さんはニコッと笑ってくれた。
「わかった。二人で青空。この言葉は二人が一緒でないと意味を成さないもの。双子として生まれてくる二人にはちょうどいい名前だったのよ。」
母さんの言い方に違和感が出てきた。
「だった。」 過去形。 葵はいないのに。
考えている思考を戻すと母さんは泣いて声にならないらしい。
その後を父さんが引き継いだ。
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