―見知らぬ男―

2/2
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
ガタッ   派手な音をたててしまった。机の上に本を広げ読書をしていたがウトウトして一瞬、意識がとんでしまった。意識が戻ると、いつものように教室の隅からはクスクス笑う声がする。摸苛は学校ではいつも1人だった。その原因がそれだ。紅葉と香江。2人の存在がこの小さい箱の中を支配している。彼女達が摸苛にすることを、他のクラスメイトは面白がりもせず、同情するわけでもなくただ、することをみているのだった。刃向かえば、摸苛の二の舞になる。 「あの子いてもいなくても同じよね。」 香江はさも面白そうにいう。 「てか、邪魔。」 紅葉は頬杖をついている。 摸苛は立ち上がった。そして、香江達の方へあるいていく。 「おい、雁。やめろよ。」 渋谷だ。年のわりに大柄な男子で、摸苛の味方をする1人だった。しかし、摸苛は渋谷を一瞥しただけで、また歩き出した。 「摸苛ぁ。」 渋谷の隣にたつ少女。彼女もまた摸苛の味方。 「何よ。」 紅葉は摸苛をみあげる。 「私に何かようか?」 摸苛は下目で紅葉を睨む。 「馬鹿ね!そんなわけないじゃない。」 香江は笑う。クラスメイト達はこの状況を息を飲んでみている。 「お前等程の馬鹿もいないけどな。」   ザワ――   「………なんですって!?」 明らかにご立腹な様子の香江と紅葉。世間でいう"マジギレ"ってやつだ。 「言葉がわからないのか?もう一度いってやろうか?」 「ふざけんじゃないわよ!!」   ガシャンッ!!!   紅葉が立ちあがり、自分の机を思いっきり突き飛ばす。それがいけなかった。   ガラガラガラ   「先公だっ!!」 クラスメイトが一斉に前のドアに注目した。しかし、そこにいたのは見たことのない男だった。ただならぬ雰囲気が教室を包み込む。   男は黒髪の長髪を一本に結んでいる。ワイシャツに真っ黒のネクタイとズボン。なにより深緑の瞳―――   おもわず、目を反らしたくなるほどに深い瞳だった。クラスメイト達もそれを感じているのか、教室中を眺め回してる瞳を順々にさけていた。その瞳がとらえたもの。 「お前だ。」 男は"摸苛"を指差した。一気に体が硬直する。男が近寄ってくる。一歩一歩確実に距離は狭まる。神経が逝きそうだ。得体の知れないものが近づいてくる。   そして   "カリッ!ダイジョウブ!?""オキテ!" "モカァァァアアァァアァ!!!" 最後に見たのは"K"の文字――
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!