137人が本棚に入れています
本棚に追加
/245ページ
蒼子には、四歳以前の記憶がない。
二階のベランダから落ちて頭を強く打ち、それまでの記憶を無くしてしまった。
だが、蒼子は時折、夢を見る。自分が泣いて、女の人を追う姿。
その人が振り向きそうな所で、いつも目を醒ます。
そして、その夢を見る度、蒼子はいつも、「私は、一人ぼっち…」そう思い、淋しくなる。
そんな時は決まって、父の布団に潜り込んだ。
父は、いつも蒼子の髪を撫でて、寝かしつけてくれた。優しい父だった。
最初のコメントを投稿しよう!