新しい生活

2/6
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
『…り、お父さんね、――ちゃんとお家出て行くから ――ちゃんにバイバイしょ?』 もう、10年以上前、まだ 僕が3歳かそこらだった頃 出来ちゃった婚で結婚した両親は仲が悪く 喧嘩が絶えなかった… 僕はお兄ちゃんだから 小さな双子の片割れを守っている… そんな夢を最近見るようになった。 女手一つで僕をここまで育ててくれた母が突然 交通事故で逝ってしまい 母以外の親族は 幼い頃に生き別れた父さんと弟だけだった僕は 早々と再婚して家庭を持っている父親からお金を貰い 一人暮らしをしている弟の所に転がり込む事になった。 弟の名前は確か…笑梓(えみし)。 「…ここか、401号…うんここだ」 父から送られてきた笑梓の家の住所と 目の前の部屋番号を確認してチャイムを鳴らす。 暫らくすると、ガチャ…っと鍵の開く音がして… 「どちら様?」 と、低い甘い声がした。 「えっと、此処、高里笑梓さんのお宅ですよね? 僕…っと…縁梨(ゆかり)…」 と、云い終わるが早いか めちゃくちゃ早くドアが開いて 黒髪の…長身の男の人…多分笑梓がガバっと 僕を抱き締めて …そのままドアをガチャリと閉めてしまう。 「……っつ…」 わけ、分かんなくて 息を殺して笑梓を見ていたけど 笑梓は全然力を緩めてくれなくて ぎゅうぎゅう抱き込む。 「っっ…えっ…笑…苦しい…」 僕の身長は168㎝…に対し 笑梓の身長は軽く180㎝はある… 一回りも体格が違う男から 強く抱き締められりゃあ… そりゃあきついわけで 抱き締める笑梓の腕をばんばん叩いて 抗議すると笑梓はやっと力を緩めてくれて それでも、僕を離そうとしないで 「ゆっっ…ゆかり……っ」 と抱きついてくる…。 まるで、小さい子がお母さんとはぐれて やっと再会した…様なそれで。 「えーみ…ねぇ…ずっと僕 此処に居るから、ね。えみ…」 僕は僕で、まるで大きな犬みたいな笑梓を あやすのも悪くないかな。 とか、思いだしたりして…
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!