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紅音は、物心がついたときには既に城で育てられていた。
幼い頃から読み書き、算術、天文学、芸術、医学、そして武術…とありとあらゆる知識、教養、技術が詰め込まれてきた。
しかし彼女はそれを苦に思うことはなかった。
紅音には家族がいない。
孤児が城でこれだけの教育を受けさせてもらえることなど、普通はありえないことだ。
どうやら紅音の母と城主が知人であるらしいのだが、そんなことに特に興味は抱かない。
今ここにいる自分が全てであり、既に存在しない人のことを考えても寂寥感が襲うだけである。
護衛には妨げとなる感情だ。
紅音はただ、育ててもらった恩返しとして、自分が死ぬ最後の一瞬まで、役目をやり遂げることだけを考えていた。
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