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季節は巡る。
近頃は冬の訪れが近づき、日の出が遅くなってきた。
辺りはまだ薄闇に包まれたままだ。
もうじき、見渡す限り一面の銀世界と化すであろう。
部屋に引き入れられた長久は、紅音からの長い説教を受けている。
「それにしてもこんな時間になぜ屋根の上にいたんです?」
「それはだなぁ、ふと目が覚めたら外を星が流れたんだよ。それで是非、この間南蛮人からもらったボウエンキョウとやらを試そうと思って…」
「で、足を滑らせて一時間間抜けにぶら下がっていたと?」
「左様でございます(泣)」
はるか彼方の地上には、元は見事な細工を施されていたであろう、ボウエンキョウが悲惨なことになっていた。
それを見下ろした紅音は呟く。
「まぁ…長久様が潰れたトマトみたいにならなくてよかったです」
「お?心配してくれてんの?可愛いじゃ…」
「私の首がかかってますから」
「ううぅ…(泣)」
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