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「遅いなぁ~」
放課後のチャイムがなってもう30分たつ。
自分が呼び出したとはいえ、そろそろ待つことにあきてきた。
「…沖口さん、まだかな」
ぼそっと呟いたとき、ザッ、ザッ、と足音が聞こえた。
「……沖ぐ…」
振り返ったところにたっていたのは、
H組の上杉 妖。クラスきっての不良だ。
「…ヨゥ」
「う、上杉さん…」
「ククッ。そんなに固まってねェで…」
そういって上杉は俺の肩に手を回す。顔を耳元に近づけて…囁いた。
「…仲良くしようぜェ」
濡れたような黒髪と熱い吐息がかかる。くすぐったくって、変になる。
「!!…や!」
その感覚が恐くて、咄嗟に手を振り払った。
「……ククッ。」
上杉は、口端を上げ俺を見下ろしていた。
黒い瞳は目が離せなくなる。
「本当、お前は可愛いなァ……」
「…………は?」
可愛い?初めて言われたよ、そんなこと。
「か、からかう…の……?」
「ククッ…その反応だよ。襲っちまいてェ…」
「!?」
嫌な予感が胸を過ぎった。
踵を返そうとするも、いつの間にか後ろは壁で。横には上杉の両手。
学ランのきぬ擦れの音がやけに響いた。
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