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抜けるように青い空。
とは、こういう事を言うのだろうか?
本日は晴天なり──。
そんな台詞を無性に言いたくなる程に海風が気持ち良かった。
何より、海に来たのは何年振りだろう?此処、数年の夏と言えば、お守りでプール通いだった。
──だから。
海はいいなぁ……。
そんな感慨が一入であった。
焼ける砂浜。
彼女の水着、笑顔。
──と。
そこまで考えて、独り言ちる。
「これで、彼女がいればなぁ……」
短く嘆息し。
目の前の光景を改めて凝視する。
モーターボートの船上で駆け回っている子供が二人。
「今年もお守りか……」
ぐったりと、肩の力が抜けた。
先ほどまで爽やかに感じられた青空も潮風も太陽も、何故か恨めしく感じる。
そんな折り。
「お兄ちゃん!」
「わっ」
突如として、加奈の顔が迫って来て。
妄想に入り込みかけていた俺の意識は強制的に現実へと引きずり戻される。
「また、亮の悪いくせだなっ」
生意気そうに背を反らせ、威張っているこいつは雅人。
何故かいつも妹の加奈に引っ付いている。
だが、俺は認めないぞ。絶対に。
誰とは無しに胸中で呟く。
まだガキの癖に私達付き合ってるの。
なんて、悪い冗談だ。
俺でさえ独り身なのに。寂しさから、つい妹達に嫉妬してしまう俺。情けない。
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