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     水溜まりに波紋が生じた。      今にも天に触れてしまいそうな高層ビル。  それは確かに高級な雰囲気を漂わしていた。    その雰囲気に不釣り合いな少年が地面にあぐらをかき、ビルの一角に寄り掛かって前方にある路地を見つめている。    だぼだぼのジーンズにスニーカー、無地のTシャツに帽子、全て黒でまとめたとてもラフな格好。    しかし、深く被った帽子から覗く鋭い漆黒の瞳と、何よりその纏う不思議な雰囲気から、少年がただ者ではないことを示していた。      ふと、少年は顔をしかめて立ち上がった。   「……はぁー」    ため息をつくと視線を下げ、目の前にある水溜まりに石を放り込む。    水溜まりに波紋が生じた。    先ほどから繰り返されるその動作には、苛立ちが見えた。  
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