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草木は焼かれ、大地は焦土と化し、風も焼けるように熱い。そう、目を開くのも辛いくらいに。
この地獄を見たショックのせいか、自分の名前も思い出せない。
頬には涙が伝う。無理もない。この炎によって両親や友達が死んでしまったと思うと…。
……まて、僕には元々「両親」や「友達」なんていたのか?それすら思い出せない。
思いだそうとすると頭が割れそうに痛くなる。
「ゴガァァァァァァァァァ!」
「……!」
突然この世のものとは思えない咆吼が聞こえた。僕の身は一瞬にしてすくみ、恐怖した。咆吼の聞こえた方を恐る恐る見た。
そこには、角は山羊、顔は狼、翼龍のような翼を広げた身の丈10mはあろう"化け物"が雄叫びをあげていた。
その"化け物"は僕を見るや否や大きな翼を羽ばたかせ此方に飛んで来た。
僕は恐怖のあまり頭の中が真っ白になり気が遠のいていった。そのさなか「無事か?リョウ。」という低い響くような声が聞こえた。
…そうだ。僕の名はリョウだ。
それだけを思い出して僕はまた意識を手放した。
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