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「―君、大丈夫か?」
突然老人に声をかけられた。その時俺は、全てを失いスラム街の路地に臥せていた。
「とりあえず、病院まで連れて…」
「…かまうな。俺は生きていても仕方がない…。」
「…君も、この戦で大切なモノを失ったか。おまけにその腕も…。」
「…お前には関係ない。さっさと…あっちへ行け…!」
俺は出せる限りの声で追い払おうとした。
「…取り返したくはないか?」
「…取り返せたら苦労は…ない。」
「取り返すためのチャンスならやれるかも知れん。紛い物で良ければ腕も、な。」
俺はこのジジィの言うことを信じようとは思わなかったが、なにか惹かれるものがあった。
「……どういうことだ。」
「私はレジスタンス直属の医師をしているものでね。もし、その命を粗末にする気ならそのチャンスにかけてみないか」
「…バカげている。が、どうせ死ぬならやってやる」
俺はレジスタンスの本部に連れていかれ、そこで次元の歪みのこと、そして其処からあの"来訪者"が来ていることを聞いた。
「…つまり、その歪みは色んな場所につながってる訳だな?」
「そう。つまるところ過去に戻ることが出来るかも知れないってことさ。」
俺はいてもたってもいられなくなった。
「それじゃあ、早速…」
「おいおい、片腕だけで何をしにいくんだ?その人を守るためには力が必要だろう?」
「む…じゃあどうすれば」
俺はじらされているようで内心腹が立った。
「だから"左腕"をやるといったろ?大切なモノを守る力が欲しければ今から処置室に来なさい。」
「…分かった。」
俺は処置室までついていった。
「――本当に力が手に入るんだな?」
「あぁ、私に任せたまえ」
「頼んだ。」
「…ではこれより人工電子義肢の移植手術を開始します。麻酔。」俺は麻酔をかけられ意識が遠のいていった。
――麻酔がきれたのか目が覚めた。左腕の感覚がある。
…がかなり重い。俺は新しい腕を見た。
――そこには合金で出来た鈍く光る腕だった。
「目が覚めたかな?」医師が嬉しそうにやってきた。
「この腕は…?」
「見た目はかなり武骨だが、それこそ君の求めた力だ。使い方次第では様々な形態に変形可能だ。」
「…まぁ、付けてもらったんだし文句はいわねぇよ。」
…ここに鋼鉄の腕を持った復讐のガーディアンが生まれたのだった。
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