生活と学校の変化

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「お話はだいたい聞かせてもらいました。翼君ですが、本人は帰宅する意思がないようなので私が預かりましょうか?」 「「は?」」 母と俺の言葉がダブる。 「翼君は術後経過は順調ですが、移植した臓器は時間が経ってから異常をきたす恐れもあります。ですので、翼君が自分から帰るという意思を示すまでしばらくは検査入院という形で私が預かりましょう。もちろん本人には衣食住を私が提供します。負担や苦労はなるべくかけないように最善の努力をさせていただきます。そうすればご両親も会いたい時に会いに来られるでしょうし…いかがでしょうか?」 「でも…」 母が桐谷先生の申し出を断りそうな雰囲気を出している。俺にとって現状これは最高の条件と言える。断る必要性は全くない。 「いいよ。桐谷先生にお世話になる。親がいる家より何倍もマシだからね」 「そんな…翼ちゃん」 母がさらに悲しそうな顔をして俺にすがってくるが、全く無視をする。すると桐谷先生が母に耳打ちをする。 「なるべく帰るようにこちらも説得します」 耳打ちを受けた母はしばらく何か考えていたが、少し悩んだあと… 「先生…翼をよろしくお願いします」 そう言って母は立ち上がって、桐谷先生に一礼した。この日、俺の新しい生活の始まりが決定した。
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