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でもそんな晴依の言葉なんて、ただの「慰め」なんだと思っていた。だって、信じられないくらいに問題は解けなかったから。
「那珂宮さん」
試験官に呼ばれ、腰をあげる。
「頑張って」
晴依は見惚れるくらいの、可愛い笑顔を浮かべていた。私はお弁当を乱暴に鞄にしまい、うなずく。
「なるようにしかならないよね」
鞄を肩にかけ教室から出ると、妙に落ち着いている自分がいた。先ほど口にした言葉は、驚くほど素直に、自分の胸に収まったようだった。
「どうぞ」
面接会場のドアをノックし、中に入る。
「みさと中学の那珂宮空です」
深々とお辞儀をし、席につく。あ、緊張してきた。鼓動がだんだん早くなる……。
「空じゃないか」
私は聞き慣れた声に、ぱっと顔をあげた。
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