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「晴依!」
二人でキャッキャと歩いていると、怒りを帯びた声が聞こえてきた。晴依はぴた、と止まると、声に振り向く。
「雨依(うい)は迷わないで行けるでしょ」
少し困ったように眉を寄せ、晴依はそう言った。
「一緒に行くって約束した」
雨依と呼ばれた彼は、ズンズンと私たちに追いつくと、晴依と私が繋いでいた手をチョップで無理やりにほどいた。
「雨依!」
晴依は厳しく雨依の名前を呼んだ。雨依は、長身でキャラメルのような髪色をしたカッコいい男の子。この制服も、きれいに着こなしているのがすごい。女の子なら誰しもが惚れてしまいそうな色気がある。
「ごめんね、空」
晴依のその言葉で、はっと我にかえった。どうやら私は雨依に見惚れていたらしい。
「これは僕の弟で雨依っていうの」
「へぇ……って弟?」
私は驚いて、二人をじろじろ見比べた。そう言われて見れば、顔立ちは似ている気がする……けど、醸し出す雰囲気は正反対。
「あんまり気にしないでね、雨依ブラコンなんだ」
晴依は私にこそりと言った。私はつい吹き出す。雨依はなんだよ、と不機嫌な顔をしたが、それを見てまた二人で笑った。
「早く行こうか、空」
「うん」
晴依がいれば、どんな不安もなんだか大丈夫な気がした。
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