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元気すぎる松次郎の散歩をなんとか終わらせ、家に戻る。
「もう十分でしょー」
まだ遊びたいと、体を振る松次郎をなんとか小屋につなぎ、私は玄関を開けた。すると、まだ夕方だというのに、酒臭い父さんが行き倒れている。
「うわっ」
すっごく嫌な気分になる。どうにか父さんを避け、家にあがった。
「あ、空おかえり」
玄関のドアの閉まる音で、母さんがリビングからひょいと顔を出す。
「ご飯もあげておいてね」
母さんは父さんが玄関に横たわっていることに触れもせず、私にドッグフードをよこした。
「……邪魔なんだけど」
ドッグフードを受け取りながら、父さんをあごで指さした。
「ああ、そうよね」
母さんはエプロンで手を拭き、父さんの背中をバンッと叩く。うわ、痛そーう。そんな風に思っていると、父さんが酒臭い口を開いた。
「おー、浪人街道まっしぐらの空じゃないかー……なんなら父さんの学校に入学するかー?」
「は?」
私は持っていたドッグフードを、危うく落としそうになった。
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