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「今から、歓迎会を兼ねた入寮式だって」
晴依を真ん中に、雨依と私三人並んで一階の談話室に入る。
「面倒くさ」
雨依は後ろ髪を掻き、心の底からかったるそうに言った。
「まあサボっても問題はなさそう……」
わさわさと集まる寮生はすごい数で、広い談話室なのに、むさ苦しいほどぎゅうぎゅうだった。
「空」
ふいに名前を呼ばれ振り返ると、名前を呼んだ人の顔もわからないまま、手を引かれた。
「空?」
うしろから、晴依の私を探す声がする。
「あの、私、」
大きな背中に私は話しかけた。足を止めずに歩くこの人は一体。
私はそのままずるずると寮を出て、外の並木道につれて行かれた。だんだん冷静になると、この背中には見覚えがある。私が今一番文句を言いたい人。
「空」
ふと手が離され、名前が呼ばれる。
「……父さん、」
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