入学式入寮式

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 なんとか海の申し出を断り、部屋に戻った。四○二、ドアを閉めるとため息がもれる。それは海とのやりとりのせいではなくて、今日一日で大きな問題を課せられたからだ。  私は靴を脱ぎ、ホテルみたいな寮だなあと思いながら、のびをする。 「……片づけなきゃ」  カバンを開いて、洋服や雑貨を取り出す。 「私ってそんなに男みたいなのかな……」  明らかに男ものの洋服を見ながら、母さんいつの間に中身を変えたんだ、という思いがふつふつ浮かぶ。でも気にしたって仕方ないよね。 「卒業なんて無理だよ」  制服のボタンを上から順にはずす。金色ボタンはいかにも学生って感じ。私は部屋着に着替え、一通り片づけ終わると二段ベッドのはしごを登る。一人っ子の私は、こういうベッドに昔から憧れていた。 ――父さんが同室の子がいるって言ってたけど、いつくるのかな。  登り終わり、ふと二段ベッドの上段を見ると……知らない男の子が本を片手に目をつむっていた。
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