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全く私を見てくれなくなった陸に、これ以上なにかを聞くということはできなかった。空気が凍ってる……。ぶるっと震え、携帯片手に部屋を出た。
携帯電話のアドレス帳を開き、「父」に電話をかける。三回のコールのあと、脳天気な声がした。
「どうしたー息子よ!」
テンション高くそう言う父に、いらっとしたのは隠せない事実。明らかに不機嫌な声で、尋ねた。
「あのさ、この学校の理事長って誰」
「私だよー」
即答され、思わず「そうか」と納得しそうになった。
「冗談はやめて」
「本当だよーだって、学園総長はおじい様だから」
「な、何だって!?」
くらくらと痛む頭がさらに痛む。
「あ、理事長の子どもっていうのは眞川くんしか知らないから安心してね」
お前か、私が嫌われる原因を作ったのは。
「私ってコネ入学なわけ?」
「ノンノン、僕と言いなさい。空は実力半分コネ半分かなぁ」
「……なんという」
実力で合格したと思っていた。誇らしかった気持ちが一気に申し訳ない気持ちに変わる。
「というのは冗談で」
落胆する私の気持ちを察してか、父さんはフォローを始める。
「うちの学校は、面接重視だから、テストがそれなりだったら、大丈夫なんだよ」
私は何も言わず電話を切った。父さんが前に言っていたこと、冗談だとばかり思っていたのに本当だったなんて……涙が出そうだった。
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