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「いや、きっと夢だよ、夢」
いててて、と頭をさすりながら、ベッドにあがる。私は壁にかかった制服から目をそらすように、目をつむった。
母さんの晩ご飯だよという声に目をさます。いつの間にか寝てしまっていたみたいだ。ベッドからおりると、部屋の電気をつける。恐る恐る制服をみたら、きちんとスカートだった。ああ、見間違いかと私は自分の間抜けぐあいを笑う。そうして部屋を出て、リビングに向かった。
「もう先に食べちゃってるわよ」
お箸でおかずをつまみながら、母さんは遅れてやってきた私を見る。
「うん、父さんは?」
私は炊飯器からご飯を茶碗につぎながら母さんに訊ねた。晩ご飯の時間だというのに、父さんはリビングには見当たらない。
「ああ、まだ玄関で寝ているんじゃないかしら」
母さんは思い出したかのように笑った。
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