受験日

2/11
前へ
/714ページ
次へ
 ジリリリリ  携帯電話のけたたましいアラームで目を覚ます。枕もとにある携帯電話を手にとり、アラームを止める。今日はいい天気のようだ。カーテンから光が漏れている。 「……頑張らなきゃ」  私はベッドから起き上がり、ショートカットの髪をぼさっと掻いた。  あくびをしながら壁にかかった制服に手をかける。パジャマを脱ぎ、ワイシャツを着、スカートをはこうとしたとき、突然部屋のドアが勢いよく開いた。 「空、今日の受験はスーツで行きなさい」  片手にパンツスーツを持った父さん。私はカッとキツい目と口調になりながら、パンツ姿をはこうとしていたスカートで隠す。 「部屋に入ってくんな、変態!」  ぎゃあぎゃあわめくが、父さんは気にも留めないようで、スーツを私に渡す。 「学校、受かりたいか?」 「当たり前でしょ、高校生になりたいよっ」 「そうかあ……」  父さんはなぜか苦々しげに笑った。ふと落ち着いて見ると、父さんはスーツ姿だった。今日は日曜日だというのに、仕事なのかな。いつも日曜日はお休みなのに、だから酔っ払って帰ってきたのかと思ったのに。 「いいから出てってよ」  私はなかなか出て行かない父さんに、しっしっと手を振る。 「……頑張らないでいいからな」  父さんはそうもらすと、部屋から出て行った。
/714ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5975人が本棚に入れています
本棚に追加