始まりは、雨の降る夜に

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―――――雨が屋根を叩く音が響く。 「…ハァ、ハァ…」 息も絶え絶えな、見た目20前後だろう、女性が目の前に倒れている少年を見る。 「…ごめんなさい、」 小さく呟くように謝る。まるでその顔は神に懺悔しているように悲痛な表情を浮かべる。 「逃がす訳にはいかなかったの…」 聞こえていない少年に向かって、言い訳するように許しを得るように話続ける。 女が少年に近付くと、足下から粘体のズチャっと言う音がする。 よく周りを見ると、家具は壊れ、血が飛び散り、まさに惨劇の後がそこにはあった。 「………ッ!」 「大丈夫?」 女が痛みで、前に倒れそうになると後ろから別の人物がそれを支えた。 その人物は20代後半なのだろう、滑るような銀髪で優しげな瞳をしている。 「神力を使い切っているわね…」 仲間がいることに安心したのか、力が抜け銀髪の女性に寄り掛かる。 倒れかかったことに驚いたものの、ゆっくりと抱き寄せ、優しいまなざしを送る。 「まさか、あの悪魔を一人で封じきるなんてね…。」 髪を梳くように撫でると、そのまま彼女は寝付いてしまった。 限界まで神力を使いきってしまうと、それを取り戻す為に何年もの間眠りにつかなければならない。 「あらあら…、お疲れ様でした。」 そう言ってから、二人の姿が消えた。 後の始末は、別の管轄の仕事であり、彼女達は自分達の世界に戻っていったのだ。 これから、一人の少年の運命が墜とされて行くことも知らずに…
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