また、それらが俺を狂わせにやって来たんだって

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「あ、あの貴将くんっ…」 一人の女生徒が本を読んでいる、少年に話しかけた。 彼女の名前は上原早苗。 整ってはいるが、その雰囲気からかわいいといった印象の強い栗色の艶やかな髪を肩の位置まで伸ばしたその少女はまるで告白をするかのような気迫で少年に向かっていた。 スッと少年が顔を上げる。すると早苗が体をビクッと震わせる。 「用があるなら、用件だけ言ってくれって言ってなかったっけ…上原さん?」 少年、貴将は無表情で言い放った。 「あ、…その、ごめんなさ…」 「こら―っ!この馬鹿冷血漢、早苗を泣かせるんじゃないわよっ!」 早苗が今にも泣きそうな顔で謝まろうとしていると、二人の生徒が横から入って来た。 「全く早苗はなんでいつもいつも、こんな奴に構ってるのよ~…!」 呆れたといった顔で早苗と向かいあう少女。彼女の名前は東嶺(とうれい)ルイナ。 親がハーフなのでやや日本人ばなれした顔立ちで、これといった欠点のない万能型である。 赤みがかった艶やかな髪が彼女の自慢だ。 「全くだ、こんな殺人犯なんかの近くにいたら危険だろ。」 もう一人の生徒が貴将がいるにも関わらず、殺人犯と彼をなじった。彼は竹原尚斗。身長が190㎝に届きそうな長身で、自分に厳しく、情に弱いので男女、上下問わず人気がある。 それを聞いた早苗が慌てて否定する。 「た、貴将くんはそんなことしないよっ…」 その言葉にルイナが頷く。 「そうね、彼にそんな大層なことできはしないわよ。」 二人に否定され、尚斗の顔がムッとなる。 「ふん、どうだか…」 「あら、男の嫉妬は見苦しいわよ?」 ルイナが言うと、尚斗の顔が一気に赤くなる。 「なっ!?、このっ、ルイナっ~!」 真っ赤な顔のままルイナに怒る。このわかりやすい態度が彼の人気のある理由の一つである(笑) 「え~と、どういうことなのかな、ルイナちゃん…?」 そんな中、一人何も分かってない早苗がルイナに尋ねた。ルイナはニヤリと笑いながら、まぁ、そういうことなのよ、と曖昧な返事を返し、早苗は更に?マークを頭に浮かべた。 尚斗は、もういい!、と不貞腐れながら自分の席に戻って行った。
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