悲しみの始まり

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『シンデレラ!シンデレラ! 何をしてるの!シンデレラ!』 「はい!ただ今!」 『私のドレスはどこ?シンデレラ!!』 『シンデレラ!!ここを片付けておいて』 『シンデレラ!!朝食はまだなの?』 『 シンデレラ!! 』 私の仕事はお日様が上る前に始まるの 私はお屋敷の高い棟の天辺に住んでいるわ 下の階には馬小屋と大きな台所があって 掃除用具も全部あるわ それが私の仕事 『シンデレラ!!何をしてるの!!シンデレラ!!』 「はーい!!今いきます!!」 姉二人の部屋を交互に走り回りながら部屋を片付ける ドレスを出して 洗濯物を片付けて 窓を開けて 頭と両手に朝食を持って 一階から二階までの大きな階段を駆けあがる 「お姉様、お待たせしました」 「お姉様、遅れてごめんなさい 召し上がれ」 更にもう一階上がって 一番奥の部屋を目指す 「お母様、遅れて申し訳ありません どうぞ召し上がって下さい」 暗幕で真っ暗な豪華な部屋 大理石で出来た立派なテーブルに朝食を置く 私はすぐに踵を返した お洗濯が山のようなのよ 『シンデレラ……お待ち』 お母様は朝食のトレーを見下ろした 豪華な銀食器 朝絞ったばかりの新鮮なミルク お庭から積み立てのグリーンサラダ 焼きたてのクロワッサンに 少し冷めたコーンスープ コーンスープ…? お母様はコーンスープのお皿に人差し指を入れた 『あら…ちっとも温かくない… こんなものを私に飲ませるの?』 「すみません、お母様 忙しくて…」 声が近づいてくる 私は必死に言い訳をしながら少しづつ後ろに下がる ピタ 壁に背がついた 微かに漏れる日差しにお母様の姿が見えた 紫の豪華なドレスに身を包み エメラルドの輝く杖を持ち 鋭くつり上がった目で私を睨む 「も…申し訳……」 『すぐに作り直しておいで!!』 コーンスープが頭から被せられる 「きゃぁ!!」 『それから、熱い紅茶もね』 「はい…すぐに…」 冷めたとは言えまだ熱いコーンスープを頭から被り 私は顔を火傷した すぐに立ち上がりトレーを持ち 部屋を出る 『シンデレラ』 私は振り替える
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