悲しみの始まり

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洗濯物 お掃除 一段落した所で私はネズミさんのジャックと、カラスさんのフォーレストを連れて街へ買い出しに出掛けたの 『やぁシンデレラ 焼きたてのフランスパンはいかが?』 『シンデレラ 今日は新鮮な魚が安いよ』 『ねぇ、シンデレラ 美味しいお紅茶はどう?』 今日も町は賑やかで みんなが私に声を掛けるの 『シンデレラ! たまごはどうだい?』 お店の人はみんな私に声を掛ける 「こんにちは、おじさん 食パンを一斤くださいな」 『はいよ! そうだ、シンデレラ 今日は特別にロールパンをおまけしてあげるよ』 「まぁありがとう、おじさん」 私は優しく微笑み掛けるの 街のみんなは私にとても親切よ 私はこの町が大好き “シンデレラ!シンデレラ! ごらんよ、あれを” なにかしら? ジャックが指を指した方を向く まぁ素敵 そこには舞踏会へ行くドレスを売っているお店があった “シンデレラ?シンデレラ? 君も舞踏会へいきたいのかい?” 「えぇ行きたいわ 私もあんなドレスを着て踊ってみたい」 “可哀想なシンデレラ” “僕らには叶えてあげられない” 「いいのよ …少し覗いても良いかしら?」 “大丈夫さシンデレラ” “見るだけなら誰も怒らないさ” 「そうね」 私はバスケットにジャックとフォーレストを隠してお店に入ったの 素敵 あたり一面豪華なドレスが並んでいて 沢山鏡があって とっても素敵 『いらっしゃいませ』 お店の中に見とれていると奥から女性の声がした ドレスを身に付けた貴婦人のような人 きっとお店の人ね 「素敵なドレスですね」 『………』 その人は私の身なりをじっと見つめた 継ぎ接ぎだらけの汚い服、穴が空き色褪せた革靴 黄ばんだ白いエプロン その人は私を見て小さく笑った どうして笑うの 『まぁ、貴方はとてもみすぼらしい服なのね』 「え……えぇ…」 『私のように綺麗になりたい?』 「……」 『ふふ…良いこと教えてあげるわ』 『石は磨いても綺麗にはならないのよ』 「そう…」
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