共に歩く未来

2/12
44人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 放課後の人気のなくなった教室。  和希は唸りながら机に懐いている啓太の頭を優しくポンポンと叩いた。  困り切った表情で啓太は和希を見上げている。 「なんか、本当は聞きたくないんだけど、啓太は聞いて欲しいんだよね…」  ため息交じりに聞く和希を、啓太は潤んだ瞳でコクコク頷きながら見つめている。  和希は大きくため息を付きながら啓太の前の席の椅子に腰を下ろし、啓太の机を挟んで向かい合った。 「で、啓太の悩みは何のかな?」  和希が両手で頬杖を突きながら聞くと、啓太は泣きそうな顔をした。 「和希…俺、こんな事和希にしか聞けないんだ」  啓太は両手を組んで拝むように和希を見つめる。 「もうすぐ七条さんの誕生日なんだけど、プレゼントに悩んでるんだ」  心底困っている様子に和希はやっぱり、と苦笑する。 「そんな事だとは思ったけどね。  悩む事でもないだろう?」  顔を乗せていた手を片方机の上に下ろす和希に、啓太は頬を膨らませて抗議する。 「悩む事だよ!  七条さんの欲しがる物なんて見当が付かないし‥」  啓太は再び机に沈没する。 「七条さんはあまり物欲無さそうだしな。  あえて言うならパソコン関係だろうけど、必要な物は持ってるだろうし」 「そうなんだよ…なぁ、なんかいいプレゼントかいかな?」  机に突っ伏したまま、視線だけを送ってくる啓太に和希は「ない」と一言だけ言った。  啓太はガバッと顔を上げる。 「和希! 俺達親友だろ!?」  机の上の腕をギュッと掴まれて、和希は複雑な表情を浮かべる。 「…啓太…そうだな。  七条さんは甘党だから、なんか作ってあげたら?」  和希の提案に啓太は目をパチクリさせて考え込む。  そんな啓太を見ながら和希はこっそりため息を付いた。 「ケーキとかは難しいだろうけど、クッキーならなんとかなるんじゃないか?」  ぱぁーと顔を輝かせる啓太を見て、こういう子供のような所は変わらないな、と和希は笑う。 「うん!良いかもしれない。  明日の土曜日本と材料買いに行く。  和希、付き合ってくれない?」 首を傾げながら可愛らしくお願いする啓太に和希は仕方ないな、と笑った。 「ありがとう! で、作るのは日曜日にしたいんだけど?」 「そうだな。明日は買った本を見て勉強して次の日実践が良いかもな」 「付き合ってくれる?」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!