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すぐさま村長の下に駆け寄るインシェアの息は、少し乱れている。
「村長、この空の暗さは、光の神に何かが……!?」
インシェアより一回り小さめの背丈の村長は、窓の近くにある椅子に腰掛けたまま、忙しなく焦るインシェアを見上げた。
「さすがインシェア、感が良いな」
冷静にそう言うと村長は椅子から立ち上がり、窓の方へ歩み寄ると、外を眺めた。
その横顔から感じ取れるものは、不安。
「……お主を呼んだのは、ライト村の外れにある、光の神を祀った(まつった)祠(ほこら)へ行き、神の様子を見て来てもらう為じゃ」
インシェアの表情が曇る。
「光の神を祀った祠……。確かそこって、危険だからって誰も近づいたら駄目なんじゃ……」
「その通りじゃ。神の力を誰も狙わない様、モンスターが放されておるからの。普段ならそっとしておくべきなんじゃろうが……、場合が場合じゃ」
村長はインシェアを真っ直ぐな目で見つめる。
「若いお主に頼むのは辛い事じゃが……、モンスター共を倒しながら神がいる祠の奥まで行くのは、他の者には無理じゃろうて」
確かにインシェアは、剣の腕には自信があった。
山に囲まれているライト村は、その環境のせいか、非常にモンスターに襲われやすい。
その村の為、モンスターから村の民達を守る為に、幼き頃から父親に剣術を叩き込まれていたのだ。
そのせいか、現在インシェアは村で一番ともいえるほどの剣の腕をもっている。
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