289人が本棚に入れています
本棚に追加
村の皆も、何かとインシェアを頼りにする事が多かった。
若い彼女に何度も何度も救われ、皆インシェアにとても感謝をしていた。
そしてそれは、本人も良く理解していたのだ。
自分しかいない。
それはあたかも決められた運命かの様にインシェアはそう感じ、村長に言い放つ。
「わかりました。光の神の様子を見て来ればいいんですね?」
だが、インシェアの顔は少し不安そうであった。
その気持ちを悟られまいと、必死に口元を引き締め隠そうとしている。
若者の、村を守りたいという決意。
「すまないな……、そしてありがとう。」
悲しげな瞳をインシェアに向ける村長。
「祠の中はとても危険じゃ。ちゃんと準備をしてから行くんじゃぞ」
他に言葉はなかったのか、素っ気なくそう言い、又窓の外を見つめた。
村長も内心は凄く不安なのだ。
しかし果たしてそれは、危険な場所へ村の若者を行かせる事に対してのものなのか。
それとも、これから起こる出来事を想像してのものなのか。
何もわからぬまま、インシェアは一人で祠へと向かうしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!