始まりを告げる光

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祠へ向かう準備を行う為、インシェアは家に戻って来た。 「ただいま……」 先程家を飛び出した時の勢いは消え、愛する娘の落ち着いた声。 ドアが開き、インシェアだと気付いた母親は、急いで駆け寄る。 「お帰りなさい、村長の用事って何だったの?」 心配そうな表情を向ける母親に、インシェアはゆっくりと口を開いた。 「この空の異変を調べる為に、私光の神の祠へ行って来る」 それを聞いた途端に母親は目を見開いた。 「何ですって!?」 あの祠が危険だという事実は、村の者なら例え子供でさえも知っている。 「光の神の様子を見て来るだけよ。大丈夫、心配しないで」 心配なのはインシェア自身もそうだろう、祠へ行くのが怖くて堪らない。 「でも……」 母親は不安そうに俯いた。 インシェアよりも少し小さなその体は、僅かに震えていた。 母親に心配はかけたくない、出来る事なら危険な場所へは行きたくない。 そう思うインシェアだが、その脳裏には、村の皆の笑顔も浮かんでくるのだ。 インシェアは母親を安心させようと口角を上げた。 そんな二人の光景を、先程から見ていた父親が静かに口を開いた。 「神の……異変か……」 インシェアと母親が、同時に父親を見た。 「行って来なさい、インシェア。そしてその目で確かめて来なさい」 「お父さん……」 何かをわかっているのだろうか。 父親の目はとても強く、真っ直ぐにインシェアを見つめる。 村の皆を不安にしているその原因を確かめる事は、インシェアにしか出来ない。 この父親は、インシェアに剣術を教えた。 だが、数年前村に迷い込んで来たモンスターと闘い、足に深い傷を負ってしまう。 その傷がたたり、以来父親は剣を握る為に足を踏ん張る事さえ出来なくなってしまった。
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