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「村長!」
そう叫びながら、村人の一人が村長の元へ駆け寄って来る。
「村長、空が……」
息を荒げながら呼吸をしている村人は、とても苦しそうに言葉を放つ。
「ああ……どうしたんじゃろう。この村で今日まで暮らしてきて初めての事じゃ」
村長と村人は、暗い空を見上げた。
青い空と、白い雲。
いつも見ていた景色は、そこにはなかった。
「どうしましょう? 他の村人達にこの事……」
「わざわざ伝える事はない、いずれ気付くじゃろう。こうなった理由もわからんしな……」
村長がそう言うと、村人は静かに頷く。
「そうですね……。では、私も家に戻ります」
そう言って村人は息を整え、自宅のある方向へと歩いていく。
それを見送った村長は又、空を見上げた。
(胸騒ぎがするのはわしだけか? 光で守られている筈のこの村が、これ程までに暗くなるとは……)
今は光は、何処にも存在しない。
あるのは暗闇に包まれた村の姿。
(まさか、神に異変が?)
そう思いかけたが、今出来る事は何もない。
村長は家に戻る事にした。
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