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連れて行かれた場所は町の広場を東に歩き
海を背にし ほんの少し歩いた小高い丘だった
「こ、こんなにも船がいっぱいなんて…」
シヴは港に入っている何十もの船を見下ろしていた
広場や港付近を歩いていたときは こんなにも船が入港していたなど
ほんの少しも考えていなかったのだ
最も 船を見る ということが
シヴにとっては 貴重なことだった
「そんなにも喜んでもらえるなんて…」
アホ毛をヒョコヒョコと動かしながらシヴに言った
「この場所はね ボクが小さくて 独りぼっちだったころ おばあちゃんがよく連れてきてくれた場所なんだ♪」
大きさ 様式 様々な船が頻繁に入出港を繰り返していた
見送る人たち 手を挙げてそれに答える船乗り
荷物を積むために船長と相談している商人
大きな船を見るために集まった子どもたち
「ここからだといろんな人や物が見えてくるんだ…」
芝に座り
ただ眼下に広がる景色を眺めた
太陽の光を波が反射し
光が揺らめき まるですべてが輝きに満ちあふれているかのようであった
シヴもまた
隣りに座り 同じように景色を眺めていた
しばらく見とれていると
彼女はゆっくりと言葉を紡いでいった
「ボクは…ここですべてを見て知った…」
「独りぼっちだったボクに この場所はすべてをくれたんだ…」
そう呟く彼女の言葉には
喜びが感じられなかった…
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