ストロベリー・ジャム。

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🍒 🍒 🍒 学校で進路調査があった。 ついに来たか、と思った。 今の自分の偏差値となんとなくの興味で、県外の大学を志望校にしてみた。 もし、県外に行けば、 亜美とは遠距離になる。 どうしよう。 遠距離を、やっていけるだろうか? 俺も、亜美も。 甘ったれの亜美は、耐えられるだろうか? もし、一年間、遠距離を続けられたとして、 亜美が俺と同じ進路を選んだら、正直、 俺は、重い。 亜美は、可愛い。 守ってやりたいし、離れたくない。 だけど、県内に残るという選択肢は考えていなかったし、 それだけの理由で進路を考えようとは思えなかった。 そして、亜美の人生を抱えてやるくらいの覚悟は、 俺にはまだなかった。 「亜美はさぁ、俺が大学行ったらどうする?」 「遠くに行くの?」 学校帰りにいつも寄る公園のベンチで、 いつものように、二人で並んで座る。 満月の夜。 「まだ決めてないけど、そろそろだし」 「遠くに行ったら、亜美は寂しくて死ぬかもしれない」 亜美は、ぎゅっと俺の腕にしがみついた。 不安が、伝わってきた。 「亜美を一人にしないでね?」 俺は、亜美の頭を撫でてやる。 だけど、 俺だって進路が決まらずに、 不安だった。 亜美の真っ直ぐな、俺を想ってくれる気持ちを、 素直に嬉しいと思う。 だけど、今は。 華奢で幼い彼女を、支えてあげるだけの自信が、ないんだ。 亜美は最近、 前にも増してすねやすくなり、甘ったれになった。 すぐに不安を口にするようになった。 俺の進路の件が、理由の一つだと思うけど。 この時は、まさか、 真知子に対する嫉妬も含まれていたなんて。 全然、 想像もしていなかった。 夏休みのある日、 補講期間も終わって、家でだらだらとテレビを見ていると、 チャイムが鳴った。 出ると、真知子だった。 真知子も驚いていた。 「おばちゃんは?」 「今日は出掛けてる。何、お母さんに、用?」 「ううん、うちのお母さんに頼まれて、お裾分け。メロン」 真知子は、ビニール袋を差し出した。 「お、ラッキー。すんません」 「いやいや。博之にじゃないから」 真知子はそう言って笑った。 「じゃ」 「あのさ」 俺は、真知子を引き止めた。 「あの、お前、進路とか決めた?」 すると、真知子は、 どきっとするような笑みを浮かべて、頷いた。 亜美の可愛らしさとは違う、女の子を意識させる笑みだった。
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