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「あたしもアイス買いに来た。ね、明日、なんの日か知ってる?」
「え?」
真知子に言われて、俺はどきっとした。
真知子は、満面の笑顔。
こいつ、こんなに首が細かったかな。なんて、
どうでもいいことを思った。
「あたしの誕生日なんだけど」
「・・・ふぅん」
ああ、そう言えば。
明日は、亜美と付き合って一年の記念日だった。
そうだよな、真知子が知ってる訳ないもんな。
ってか、真知子の誕生日なんだ。
昔はよく、真知子の家の誕生会に呼ばれたっけなぁ・・・。
あんなに仲良かったのに、いつの間にこんな風に距離が産まれたんだろう。
「何それ、反応薄いし」
真知子は、また笑った。
昔から、先をどんどん進んでいく真知子の後ろを、
俺が渋々着いて行く構図ができあがっていた気がする。
だけど肝心なところで、真知子は急に弱くなり、
結局、俺が真知子の小さな手を引いてやるのだ。
二人とも中学で、
家が近く、クラスも同じだから付き合ってるんじゃないかとからかわれるのが嫌で、
いつしか、距離を置くようになっていたけれど。
気付けば、高校に入学して三年が経ち。
毎日のように顔を見合わせるけど、メアドさえ知らない二人になっていた。
「ヒロ、待った?ごめんね?」
亜美が、約束に少し遅れてやって来た。
「いや、平気だよ」
近付いて来るのに、
気付かなかった。
あんまり気にしたことはないけど、亜美は遅刻魔だ。
いつも亜美がごめんねを言い、俺が気にしないよと言う。
それから亜美は、嬉しそうに俺の掌に指を絡ませる。
温もりに、掌の柔らかで小さな感触に、
少しどきっとするのだけど。
だけど。
約束していた通り、二人でカラオケに行き、プリクラを撮った。
ゲーセンの、カーテンで仕切られたプリクラのカメラの前、
亜美が頬にキスをしてくれた。
プリクラに書き込みをする時に、
「ずっと一緒」
亜美が書いた。
来年の今日を、
俺たちは二人で迎えることができるだろうか?
俺は、自分自身のことさえ、不安で仕方ない。
亜美を大切に思うからこそ、
半端なことを約束して傷付けたくないし、期待させて悲しませたくない。
無邪気にプリクラの書き込みをする亜美の後ろ姿を見ていたら、
愛しさが込み上げてきて、
俺は、後ろから亜美をぎゅっと抱き締めた。
来年の今日を、
俺たちは二人で迎えることができるだろうか?
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