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プリクラにらくがきをしていたら、
ヒロが、後ろから抱きついてきた。
ヒロは普段、人前でこんなことをする人じゃない。
二人で迎えた一年目の記念日は、
とろとろに甘い筈なのに、
きゅっと胸がすぼまるように、どこか切なくて酸っぱい。
ねぇ、ヒロも同じことを思ってるのかな?
来年の今日を、
あたしたちは二人で迎えることができるのかな?
そこに、会話はない。
だけど熱い気持ちで、あたしたちは通じあえる。
「ヒロ、卒業したらどうするの?決めた?」
「うーん、どうしようかなぁ」
帰り道、手を繋ぎながら尋ねると、
ヒロはなんでもないことのようにさらっと言った。
「やっぱ。地元は離れちゃう?」
「うーん、そうなるかも」
ああ、やっぱり。
ヒロは、自分の答えが決まっているときいつも、うーん、と言うのが口癖で。
柔らかく伝えようとする無意識のためなのか、
あたしは、優しく響くそれが大好きなのに。
今は、胸に突き刺さる。
ヒロがあたしに何を期待してるのか、
本当はあたしは知ってる。
「離れても、あたしは大丈夫」
例えば、ヒロのためなら何でも出来る気がする。
学校をやめてもいい。
ここで土下座しろと言われたらする。だけど、それらは全て、あなたが側にいて力をくれるから。
ヒロが欲しいもの、
あたしは、あげられない。
ヒロ、あたし、あなたに依存してるのかな?
独占したくて堪らないよ。一分一秒、離れたくない。
世界中で一番、
あなたが、好き。
好きだから、側にいて。
あたしが思ってること、ヒロは知ってるんだよね。
ヒロがあたしの気持ち全部分かってくれてるってことも、
あたしは分かってる。
お互いのことを理解しているって、
こんなとき、なんだか切ない。
こんなに手を繋いで近くにいるのに、
すごく切ない。
「そう言えば、この前コンビニで会った真知子って、覚えてる?」
どきん。
胸が、高鳴った。
「あいつ、今日が誕生日らしくて。俺たちの記念日に誕生日のやつがこんな身近にいるって、なんか不思議じゃない?」
「そうかな」
陰を潜めていた嫉妬心が、むくむくと沸き上がる。
ヒロは。
あたしのなんだから。
「一年365日だから、毎日誰かの誕生日じゃん」
「まぁ、そうだね」
なんて嫌な女の子なんだろう、あたし。
こんなこと、言いたい訳じゃないのに。
こんなあたし、嫌いだ。
大嫌いだ。
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