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プリクラを撮った後、亜美は急に元気を失った。
進路によって離れることを、彼女は悟ったんだ。
「あたしを、置いて行かないでね」
言って、亜美は泣き出した。
どうしたらいいのか、
分からなかった。
胸が、痛い。
やりきれない。
亜美の頭を撫でてやったけど。
すがりつくように、亜美は俺の背中に手を回してきたけれど。
好き、なのに。
なんだか亜美が遠い。
帰り道、亜美と別れてからなんだか疲れが襲ってきた。
好きだから、確証のない慰めなんか言いたくないし、正直な自分でありたい。
だけど、亜美には。
それを伝えるのは、困難に思えた。
玄関口、向かいの真知子の家の二階を見上げた。
昔から変わらない、道路に面した真知子の部屋。
電気は消えていた。
「あの、お前さ、進路決めた?」
夏休みのあの日、真知子は笑顔で頷いた。
あの笑顔を、思い出した。
「何か、用?」
声に驚いて振り向くと、真知子がいた。
「・・・お、おかえり」
とっさに言ってしまった。
「・・・なんだそれ。ただいま」
真知子は笑った。
「何か用だった?」
「いや、別に」
デニムのポケットに手を入れると、亜美がくれたキャンディーに触れた。
「これ、やるよ。誕生日だよな」
よれよれになった包み紙のキャンディーを差し出す。
真知子の、思ったより小さな掌に、一瞬触れた。
「なんだよ、もっといいのをくれたらいいのに」
真知子は、憎まれ口を叩いた。
「お前、アメ玉を馬鹿にすんなよ」
俺が真知子の顔を見上げると、真知子はうつ向いていた。
「じゃ」
「博之」
俺が、玄関に向かおうとすると、背中から真知子が呼んだ。
「・・・ごめん、嘘。すごい嬉しい」
どきっとして。
俺は振り向く。
真知子の口から、
そんな台詞を聞くなんて。
真知子は、
ノースリーブのワンピースで、唇を噛み締めて。
夕闇の中、こちらを向いて立っていた。
その姿が、
なんだか無償に心の中に刻まれて。
ああ、こいつ、
女の子だったんだ。
当たり前のことを、初めて思う。
胸がすくむ。
真知子が俺を見た。
ただ、それだけで。
動けない。
真知子の視線が、俺を捕えて離さない。
「あのね、あたし」
真知子は口を開いて、何かを言いかけた。
その時。
「あら、真知子ちゃん」
うちの玄関から、財布を持ったお母さんが出てきた。
「あ、おばさん、こんばんは」
「この前、すいかありがとね。お母さんにもよろしく伝えてちょうだい」
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