ストロベリー・ジャム。

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🍒 🍒 🍒 博之に彼女がいると知ったのは、 仲良く手を繋ぐ二人を、見掛けてしまったから。 その時の衝撃は、例えようもないけれど。 ああ、そうなんだ。 馬鹿みたいにその場に立ち尽くし、あたしは道路の対岸を歩く博之を、 穴が開くくらい、 見つめてた。 博之は、 あたしの視線に気付いて。 一瞬、 こちらを向いた。 視線が重なった瞬間、 あたしの心臓は、どきん、と大きな音を立てた。 彼は、 あたしの知ってる博之ではなかった。 知らない人だった。 いっそのこと、 博之なんて、 あたしの視線で本当に穴があいてしまえばいい。 そうして、 あたしのものに、 なればいいのに。 そんな、あたしが知らない子と、 手を繋いだりしないで。 見つめたりしないで。 笑ったりしないで。 あたしはここで、 ・・・泣いてるんだから。 気付け。 仲良く歩く二人の後ろ姿を見つめながら、 道端で、涙が溢れるのを、 止めることが出来なかった、去年の夏。 最低最悪な、 誕生日のことだった。 博之は、あたしの気持ちなんて全然気付いていない。 彼にとってのあたしは、 ただの、幼馴染み。 ただの、隣人。 あたしにとって博之は、 ただの、なんかじゃないのにな。 好きな人に彼女がいる。 それを知った時、あたしは、 自分の気持ちに整理を付けなければならなかった。 だけどそれは、 そんなに簡単な作業ではなかった。 だって、毎朝会ってしまうんだもん。 間近で出会ったら、 胸が痛い。 どうしようもないよ。 なんて思いつつ。 本当は、 ただ単に、家を出る時間をずらせばいいだけの話なんだよね。 そしたら、会わなくて済むのにね。 そう、頭の中では分かってる。 だけど、仕方ないじゃない。 好き、なんだもん。 告白するとか、しないとか、そんなレベルの話の前に、 好き、なんだもん。 苦しくても辛くても、 毎朝ちゃんと、顔を見たい。 ストロベリー・ジャムを塗ったパンと牛乳。 テレビの占い。 そして、彼。 自分でも馬鹿だなぁと思うのに、 そうじゃないと朝が始まらない。 博之と同じ東高の友達から、 博之の彼女は一歳下の同じ東高の子だって聞いた。 あたしと真逆のタイプの、ふわふわした可愛い女の子。 届かない。 好きでいても、辛いだけ。 分かっているのに、 今日もあたしは、 こちらを見ない彼の後ろ姿を 見送るのだ。
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